「明日の地域シンクタンクを考える」第5回 一般財団法人岡山経済研究所(岡山県)

2022年10月

井上 治郎 (いのうえ じろう)

一般財団法人岡山経済研究所 調査部長

〈聞き手〉 一般財団法人日本経済研究所 地域未来研究センター

■組織と沿革

一般財団法人岡山経済研究所は、中国銀行を中心に地場経済界、岡山県等の支援により、1977年9月に設立されました。岡山県を中心に広島県東部、香川県など東瀬戸内地域を対象に活動し、現在の会員数は約5,000です。中国銀行からの出向者を中心に職員19名が在籍し、地域経済・地場産業・企業経営・地域振興等について調査研究を重ねるとともに、セミナー・講演会等を通じた経営支援活動、受託調査を通じた提言等に注力しています。

■調査研究事業

地域の経済状況を把握するため、企業向け景況調査、ボーナス支給予定調査、消費者マインド調査等を定期的に実施しているほか、ジーンズや学生服など地場産業の動向の把握にも努めています。また、本年度は「持続可能な社会の構築に向けた、当地企業の現状と課題」と題する調査を実施するなど、時節に応じたテーマにも随時取り組んでいます。
特徴的な業務は、地域の複数の経済指標を合成した岡山県景気動向指数(CI)の作成です。CIは景気の方向と強さを同時に表現するもので、景気を直感的に把握しやすくなります。地域のCIは都道府県の統計所管部署が作成するケースが大半ですが、岡山県CIは当研究所が作成しています。
近年、注力している調査研究事業として、地域産業連関表とPPP/PFIがあります。

地域産業連関表の作成・活用

産業連関表を活用した経済波及効果の計算では、産業団地の開発、公共施設の新設等の計画時や、岡山県内でのアートイベント開催時に、建設・稼働・開催等に伴う経済波及効果の推計を実施しています。
当研究所の特徴は、産業連関表の活用だけでなく、作成支援にも関わっていることです。地域産業連関表は、地域内の経済循環の姿を明らかにし、産業振興策の検討や政策評価をするための有力なツールとして、地方創生の政策が推進される中で政策分析の重要性に対する認知度が高まりました。その有力な旗振り役である岡山大学経済学部の中村良平特任教授を中心としたチームの一員として、岡山県内の市町村、あるいは複数の市町村で構成される地域圏の産業連関表の作成を支援しています。
産業連関表の活用に向けた啓発面では、岡山大学大学院社会文化科学研究科の社会人向けコースで産業連関表を主内容とした講義「政策分析」を2008年度から受け持っています。また、今年度は機関誌に「産業連関表の使いドコロ」というタイトルで、資源価格の高騰が消費者物価の上昇に影響する経路を説明するなど、活用例を5回にわたり連載中です。

PPP/PFIの普及・啓発

成長を期待できる分野として重視しているのがPPP/PFIです。公共施設の跡地活用や給食センターの再編に関わる事業など、徐々に実績を積み上げています。現在のところ岡山県内でPFIに積極的な自治体は一部にとどまるものの、逆に伸びしろは大きいと受け止めて、普及啓発活動に注力しています。岡山市主催の岡山PPP交流広場を(株)日本経済研究所とともに平成27年度からサポートしていますが、これに加えて本年度は国土交通省とPPP協定を締結して個別相談パートナーに初めて登録しました。
PFIに関するセミナーも本年度、独自に企画し、開催しました。PFI普及に向けたシナリオを
①地域内のPFIアレルギーを解消させ、ハードルの低い小型案件で成功体験を積む
②担当した職員にノウハウが蓄積される
③PFIに知見を有する職員が増加するにつれて、規模の大きなPFIが出るようになる
と描き、主に地方公共団体の職員を対象に、住宅PFIをテーマとしたセミナーを7月に開催しました。今年度中にもう一回PFIセミナーを開催する予定です。
このほか広島県福山市が本年度から始めた公民連携(PPP/PFI)勉強会も、母体行である中国銀行等とともにプラットフォームの構成団体として参画しています。

■経営支援事業(セミナー)

地域の企業に対する経営支援の一環として、企業経営者や従業員向けセミナーに注力しています。しかし、新型コロナの影響で2020年度は計画していたセミナーの大半を開催できませんでした。そこで、2021年度から会場でのリアル受講とWEBでのオンライン受講を参加者が選択できるハイブリッドセミナーを開始しました。感染拡大時にはオンライン限定に切り替えるなど機動的な運用ができるようになり、2021年度はオンライン限定で12回、ハイブリッドでは14回のセミナーを開催し、人材育成に取り組む地元企業のニーズに応えることができました。新入社員セミナーなどリアル限定にしたものも一部ありますが、2022年度も大半をハイブリッドセミナーとして開催しています。

■地域社会の持続的な発展に向けて

主な出資母体である中国銀行は2022年10月に「ちゅうぎんフィナンシャルグループ」として持株会社化し、銀行と主要なグループ会社を再編します。当研究所は再編の直接の対象ではありませんが、「地域・お客さま・従業員と分かち合える豊かな未来を共創する」というグループ経営理念の下、地域社会の持続的な発展へ貢献していきたいと考えています。

著者プロフィール

井上 治郎 (いのうえ じろう)

一般財団法人岡山経済研究所 調査部長

1992年3月 早稲田大学政治経済学部卒業。1992年4月中国銀行入行 東京支店、財政金融研究所での研修、倉敷支店等を経て1998年1月岡山経済研究所出向。マクロ経済調査では岡山県景気動向指数の改定、消費アンケートのWEB化、景気アンケート調査等、受託調査では木材産業、EVシフトに関する調査等に従事。2021年4月 調査部長。2008年~岡山大学大学院社会文化科学研究科非常勤講師。

〈聞き手〉 一般財団法人日本経済研究所 地域未来研究センター