編集後記 2024年2-3月号

2024年2-3月号

笹野 尚 (ささの たかし)

一般財団法人日本経済研究所(「日経研月報」編集長)

はじめに、令和六年能登半島地震により亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災されたすべての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
この甚大な災害に対し、鹿児島県日置市の永山市長は、元旦から全国の市長と連絡を取り合いつつ震災の避難者受け入れのための公営住宅や移動費支援の体制を整備したことや、「復興より移住を」という議論に対して、反論ではなく、住み慣れた地域に暮らす市民の幸福度を高めるためにできることを一つずつ積み上げていくという市長としての姿勢を述べられています。
本号の特集テーマは、ウェルビーイング・健康経営です。足元では、ほかに喫緊の課題が山ほどありますが、長い目でみると、復興も生活も経営も、個々人や家族・社員・地域・国民のウェルビーイングのためにあると言っても過言ではないでしょう。平野さんら(講演録)は、これからの企業の人事セクションの役割は、管理中心から人資本(人材)の配分へと重心を移し、社員が気持ちよく働いて創意工夫を発揮できる環境を整えるべきと言われます。ユニリーバで先進的な人事制度を次々に実現された同社・元人事総務本部長の島田さん(インタビュー)は、企業のウェルビーイングは仕組みなどで上げることが出来る、そうした仕組みづくりの始まりは、個々人の直観や違和感にあると明解におっしゃいます。さらに、関口さんは心身と地域を元気にするウェルネスツーリズムについて網羅的に語られ、永島さんはウェルビーイングの先行研究をもとにその構成要素を分析しています。
また、本号からスタートするシリーズ「豊かさの基盤としての生産性を考える」では、研究会座長の宮川先生が、アフターコロナにおける多様な資本蓄積による豊かな社会の実現について考察されました。ほかにもさまざまな分野の第一線で活躍する経営者・専門家・実務家の方々に独自の視点でご寄稿いただいていますので、ご注目ください。

著者プロフィール

笹野 尚 (ささの たかし)

一般財団法人日本経済研究所(「日経研月報」編集長)