シリーズ「スポーツ×○○」第3回
徳島発!「eスポーツ」最前線 ~新時代のステージへ~
2026年4-5月号
1. 「そうだ!eスポーツをやろう!」
コンピューターゲームの対戦を「競技」と捉え、「eスポーツ」というワードが聞こえ始めたばかりの2018年春、ある企画会議から飛び出した一つのアイデアは、その後、今日に至るまで、徳島県が「eスポーツ」に取り組む契機となる大きな提案となりました。
今から遡ること10数年前、人口減少により、地域が減退していく中で、徳島県が活路を求めたのが「アニメ」による地域活性化でした。本県ゆかりの企業である人気アニメ『鬼滅の刃』制作会社のスタジオや直営映画館が立地している徳島では、2009年より、アニメ関連企業と連携して、声優やコスプレイヤーが全国から集まるアニメイベント「マチ★アソビ」を年2回開催しています。多くのコスプレイヤーが徳島の街中を賑わす本イベントは、アニメによる地域イベントの先駆けとして、アニメツーリズム協会から「アニメ聖地」に認定され、毎回5万人規模の来場者にお越しいただくイベントとして大きな認知度を獲得しています。

その「マチ★アソビ」の新たな企画を練る中で、アニメと親和性の高いゲームを題材とした企画「eスポーツの対戦会を実施しよう!」というアイデアが飛び出したのです。こうして、徳島のeスポーツは、「マチ★アソビ」の中のステージイベントの新機軸として、2018年春のイベントからスタートしました。
この年、陸上や水泳のようにeスポーツも競技種目に加えられたジャカルタ・アジア大会が開催されるといった時流にも乗って、この企画は、予想を大きく上回る反響をいただきました。そこで、同年秋のスポーツの日に開催された「マチ★アソビ」では、新たな趣向として、サッカーゲーム『ウイニングイレブン』を、ゲーム中の選手1人をプレイヤー1人が操作するモードで、会場である徳島の商店街と、東京・秋葉原のeスポーツスタジオとをオンラインでつなぎ、徳島と東京に分かれて「11人」と「11人」が試合するというオンライン対戦会を開催しました。
11人の中には、ジャカルタ・アジア大会で、見事金メダルを獲得した日本人プレイヤーをはじめ、プロ選手も参加したことで、会場はまるでワールドカップ本戦かと思わせるような熱狂で、大いに盛り上がりました(写真1)。
当時、メディア等で「eスポーツはスポーツか」というような議論が多くされていましたが、商店街の特設会場には、「する」プレイヤーはもちろん、東京との対戦を「観る」ために地域の皆さんが多く集まり、会場全体で「徳島」チームに熱い声援が送られ、この興奮・熱狂はまさに「スポーツそのもの」だと実感したところでした。
2. 「一時的なイベントではもったいない!」
こうした活動を展開していく中で見えてきたのは「eスポーツの可能性」です。ゲームというフィールドで闘うeスポーツは、体格や年齢の差があまり影響しません。男性も女性も、同じ条件で闘うことができます。さらに言えば、ハンディキャップをお持ちの方でも、健常者と競い合うことが可能になります。言語的な敷居も低く、国籍や文化の壁もゲームの世界の中では乗り越えられるのです。
これを一時的なイベントに終わらせるのではもったいない!
アニメイベントを彩る企画の一つとして生まれ出たeスポーツは、それ自体を独立して地域活性化に活用すべきではないか。そんな思いは、県の取組みを見た団体や教育機関、企業の皆さんにも届き、「eスポーツで徳島の活性化を!」との声が広がっていきました。
イベントを通じた「にぎわい創出」はもちろん、多様な方々が一緒にプレイできるeスポーツだからこそ可能となる「教育」や「福祉」といった様々な分野での活用の期待から、若手経営者のグループ「徳島青年会議所」を核に、徳島県はもちろん、中心市街地の商店街、県内の大学や高専、専門学校、金融機関など多くの主体に参画いただき、2019年3月、「徳島eスポーツ協会」が発足することになります。そして、同年7月には、協会が主催となって、子供から大人まで、1日で5,000人もの来場者を呼び込むeスポーツを核としたお祭りイベント「闘電街(とうてんがい)」が開催されました(写真2)。このイベントは2019年の第1回を皮切りに以降毎年開催され、現在も続く恒例のイベントとなっています。
3. 「もちろんeスポーツはスポーツだ!」
こうしたeスポーツの盛り上がりは、徳島eスポーツ協会に参画いただいたメンバーを中心に全県的な広がりを見せます。
阿南市にある「阿南工業高等専門学校(阿南高専)」では、協会設立と同時期に「eスポーツ研究会」が立ち上がり、eスポーツによって、生徒の個性発揮の機会を創出し「人間力形成」につなげるという、全国に例のないカリキュラムを展開しています。このeスポーツ研究会・初代メンバーは、翌年3月開催された「全国高校eスポーツ選手権」で、全国の強豪校と渡り合い、堂々3位に輝きます。その活躍は当時から多くの注目を集め、2024年3月には彼らをモデルとして、eスポーツを題材にした日本初の劇場公開映画『PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』まで制作されました。

また、2019年12月には、徳島市の四国大学に「eスポーツ部」が発足。学生主体で、eスポーツを活用し、地域の高校生や障がい者施設との交流を進めるなど精力的に活動しています。学園祭など大学生主体のイベント実施にはじまり、今では、商工団体などと連携・協力して、毎月のように、県内各地のeスポーツイベントを運営・実施するまでに成長しています。
また、障がい者の社会参加や交流にeスポーツを活用するという点に着目し、2021年1月には、全国の障がい者施設をオンラインでつなぐことで、障がい者施設によるeスポーツの全国大会を、徳島県が主体となってスタートさせました。その後、運営主体を徳島eスポーツ協会が引き継ぐ形で継続し、今では、全国の障がい者施設・団体から、開催を待ち望む声をいただく大会となっています。
徳島県そして徳島eスポーツ協会が、eスポーツを架け橋に、企業や学校、団体や個人をつないだことで、地域の未来を創造する大きな可能性を呼び起こすことができたと考えています。

その後のコロナ禍で、多くのリアルスポーツが影響を受ける中、オンラインでの対戦が可能なeスポーツの利点を活かした交流試合や全国大会など、徳島県そして徳島eスポーツ協会では、ゲームを通じての人のつながりづくりを一層広げていきます。こうした活動が結実する形で、徳島県は、2022年9月、徳島駅前商業施設に、全国初となる「県立の常設eスポーツ活動拠点」として、「デジタルスタジオ」をオープンさせることとなりました。
本施設は現在、徳島eスポーツ協会が運営に携わり、様々な主体によるイベント利用はもちろん、小中高生の居場所(サードプレイス)として、そして協会によるシルバー世代に向けた体験会開催など新機軸提案の場として、多岐にわたる活用がされ、徳島のeスポーツの発展・活性化になくてはならない施設となっています。
先述のeスポーツはスポーツか、の問いに、「する」「観る」に加え、様々なプレイヤーを「支える」場所として、デジタルスタジオが誕生したことにより、eスポーツは、リアル・スポーツ同様に、誰もが生涯にわたって携わることが出来る流れを生み出し、加速することができたと考えています。
さらに言えば、「する」「観る」「支える」構造に加え、eスポーツにはリアルスポーツには無い要素があります。それは、対戦をするプレイヤーは、ゲームのキャラクターを自分の分身として操る点です。言うなれば「なりきる」。「する」「観る」「支える」に「なりきる」を加えるeスポーツ。徳島発祥の「マチ★アソビ」では、展示会場でもイベント広場でもなく、コスプレイヤーが街中を練り歩く姿で溢れかえります。そう、コスプレ文化の根付く徳島だからこそ、「なりきる」要素を有するeスポーツがうまく浸透したのかもしれません。
4. 「徳島のeスポーツ新時代は、皆さんとともに!」
官主導で始動し、徳島eスポーツ協会設立後、徳島eスポーツ協会に参画する様々な主体により多様な発展を遂げてきた徳島のeスポーツ。その流れは、さらに加速し、新時代へつながる新たな展開を切り拓いています。
企業等を巻き込み、全国に徳島を発信するということでは、2022年、徳島eスポーツ協会の活動を発展させ、県内事業者からの支援を集め、徳島を旗印に全国の猛者たちが集結するプロチーム「DOPENESS TOKUSHIMA(ドープネストクシマ)」が立ち上がりました。同チーム運営団体では、2024年からプロライセンス者育成も視野に、世界的に人気の格闘ゲーム『ストリートファイター6』による全国大会「DNECUP 2025 in Tokushima」を開催し、全国から256名の猛者たちが徳島に集結、熱い大会が繰り広げられています。徳島を、全国、そして世界を狙う、フィールドに! これが徳島が打ち出すeスポーツ「新時代」のスタイル!
そして、教育分野では、バーチャルな空間に自分の分身を投影することが、プレイヤーの感性・創造性を高め、子供たちの脳を大きく刺激します。情報教育が必修化され、子供たちが学校でプログラミングを学ぶ時代にあって、eスポーツからの派生形として、徳島大学や四国大学を中心に、『Minecraft(マインクラフト)』を活用した体験プログラムが各地域で展開されています。教育版Minecraftで地域課題の解決をテーマに毎年開催される競技コンテスト「Minecraftカップ」にも、徳島から多くの子供たちが参加しており、徳島県教育委員会では、こうした活動のさらなる活性化に、独自に「とくしま新時代賞」を創設し、顕彰しています。子供たちの発想と創造の未来形へ、課題解決をまずバーチャルで実現する、「新時代」の教育の形です。

単なるイベント企画から始まったeスポーツは、企画者の思いを遙かに超え、数年の間に、県内のあちこちで、仲間をつなげ、広がり、新たな可能性を生み出し、次の成長につなげています。さあ、次は徳島から何を生み出すことが出来るか。新しい可能性を、今度は皆さんと一緒に創り上げたい、徳島の「eスポーツ新時代」に、どうぞご期待ください。
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