編集後記 2025年12-2026年1月号(特集「イノベーションの新地平 ~未来を創る挑戦者たち~」)

2025年12-2026年1月号

饗場 聖子 (あいば せいこ)

一般財団法人日本経済研究所(『日経研月報』副編集長)

編集をしていて避けて通れないのが、執筆者にやむを得ず原稿の修正を依頼すること。時には「修正できません」とお叱りを受けたり、表面上は快くご納得いただけても内心では不快な様子が伝わることも。しかし、ChatGPT は違います。私のどんな依頼にも「もちろん!」と快諾してくれます。ただ、時折寄せられる心ないセリフには、正直イラっとすることも……。生成AI には感情がないからこそのギャップなのでしょう。
一方で、人間の言葉には感情があります。それは、その人の経験や価値観、そして日々の試行錯誤や思いが込められたものであり、人との“共感”を呼び起こす力を持っている。「イノベーション」や「共創の現場」でも、異なる価値観や視点が交わり、こうした共感を通じて、新たな価値が生まれる――今回の特集「イノベーションの新地平 ~未来を創る挑戦者たち~」を編集する中で、そのことを改めて実感しました。
本特集では、JR 東日本が推進するオープンイノベーションでありウェルビーイングな社会の実現を目指したモビリティ変革コンソーシアム、社内外の連携を通じてイノベーションを加速させるソニーグループのアクセラレーションプラットフォーム、日立製作所が挑む市民参加型の共創型イノベーション、UACJ が手がけるボトムアップ型の新規事業開発、京都大学が立ち上げた新組織が挑む新たな価値循環の創出のための取組みなどを掲載しています。これらの多様な実例には、課題に真正面から向き合い、現状の枠組みを超えた連携や異なる視点を取り入れる中で、人と人との共感や対話を通じて生まれる地道な努力が込められていることを感じます。
皆さまには、こうした共創の現場で生まれる熱量や情熱を感じ取っていただき、それらの挑戦がどのように新しい価値を生み出しているのか、ぜひご一読いただければ幸いです!

著者プロフィール

饗場 聖子 (あいば せいこ)

一般財団法人日本経済研究所(『日経研月報』副編集長)